技術者の登録制度導入へ。更新制度組み込みで技術レベルの維持も期待
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国土交通省は2月28日の「適正な施工確保のための技術者制度検討会」で、技術者個人の資格や経験といった情報を確認できる「登録制度」の導入を明らかにしました。
登録制度の構築により、実務経験で主任技術者になるケースを含めてすべての技術者の把握に繋げる狙いです。またこの登録制度に一定期間での更新制度を組み込むことにより、将来的には各技術者に関する正確な情報の把握を可能にさせることで、技術レベルの維持や工場といった効果も期待できる見通しです。
国土交通省による技術者情報の把握が可能に
この制度の具体的なイメージとしては、技術検定制度による資格者(建設業法による技術認定の合格者)だけでなく、技術士などの他の資格者や実務経験による資格者を登録する仕組みとなり、登録された技術者が監理技術者や主任技術者として実際の工事に従事するという流れになります。また技術者個人による不正行為の抑止への為に、不正行為に対しては登録抹消などの処分規定が設けられる予定で、この処分規定と更新制度の導入により、技術レベルの維持、向上へと繋る狙いです。
現行の建設業法では建設業者への罰則は規定されているものの、技術者個人の処分という点では、技術検定の不正受験に対する「合格の取り消し」のみというのが現状で、産業全体の信用を失墜させるような重大な過失や違反行為に対して、技術者個人の責任を問う処分規定はありません。
現在は「専任の監理技術者として配置される者は資格者証の登録が必要」とする監理技術者に対する資格者証の情報登録制度は存在しますが、実務経験による資格者など、主任技術者となり得る技術者の絶対数を正確に把握しきれていないというのが実情となっており、この点では、この登録制度が持つ政策的な意味合いは大きいでしょう。
実際の登録時に厳格な要件確認を実施すれば、今後工事の受発注や施行中の手続きとして、配置される技術者が必要要件を満たしているかどうかの確認や、建設業許可の申請や変更の際の書類確認、経営事項審査の際の書類確認など、手続き時の書類の簡素化や審査の手間を省くことなどが期待されます。また技術者個人にとっても、意識の向上だけではなく、倒産や転職で所属企業が変更となった場合の実務経験の証明がスムーズとなるなど、その見返りは小さくありません。
実施体制の確保や相当数に上る主任技術者の登録手続きや費用負担の問題など、課題は残されていますが、それを補って余るだけの効果が見込める見通しです。今後は技術検定の受験者数減少や、合格者の高齢化を打破する取り組みとしても注目を集めることになりそうです。
登録制度導入による効果とは
■ 発注者・許可権者
・登録時の厳格な要件確認により、適切な技術者配置、不良不適格業者の排除が可能となり工事品質の向上が期待できる
・建設業許可や経営事項審査における、技術職員名簿などの審査の手間の軽減が期待できる
・特定専門工事審査型総合評価方式(試行中)など、下請けの配置技術者の評価を採用した発注方式において、要件審査をより厳格化できる
■ 施工会社・許可業者
・配置の都度実施している実務経験等の要件確認の手間が軽減できる
・建設業許可や経営事項審査における申請書類の簡素化が期待できる
■ 技術者個人
・有資格者であることの証明が容易になり、意識向上につながることが期待できる
・倒産や転職で所属企業が変わった場合に実務経験等の証明が容易となる
■ その他、制度面
・技術者の担い手の確保・育成等の政策を進める上で重要な有資格者の人数等の把握が可能となる(現在は管理技術者のみ)
・技術者個人に責任のある不正行為に対する処分規定の導入や更新制度の導入環境が整う
■ 課題
・相当数に上る主任技術者の登録手続きの実施体制の確保
・登録にかかる費用や手続きの手間の発生、負担者の理解
登録基幹技能者を建設業法の主任技術者に認定へ
この検討会ではさらに、公共工事の発注などで広く活用が進みつつある「登録基幹技能者」を建設業法の定める主任技術者として認定する方針を固めました。主任技術者の資格要件を満たすものとして明確に認定することによって登録基幹技能者のさらなる認知度の向上や普及の促進に繋がることとなりそうです。
現行では、建設業法に基づく技術検定などの国家資格の取得に加え、最終学歴に応じた実務経験によって主任技術者になることが可能で、地すべり工事士、1級計装士、解体工事施工技師、基礎施工士といった建設業法の施行規則に基づいて登録された民間資格の合格者も主任技術者として認められています。
新たに主任技術者への資格認定を進める上で、試験の公平性・透明性や認知度、そして必要な知識や経験といった「認定基準」を設定し、現行の要件で求めている内容に照らし合わせて、基幹的な役割を担う職種での10年以上の実務経験や3年以上の職長経験、また最上級の技能者資格といった実施機関が定める資格の保有が求められ、その熟達した技術や経験、マネージメント能力をそなえた認定資格である「登録基幹技能者」に白羽の矢が立てられることとなりました。
実際に認定講習の受講要件と主任技術者の要件(実務経験・資格)との対応状況を比較すると、全33職種のうち、「登録橋梁基幹技能者(鋼構造、とび・土木)」「登録トンネル基幹技能者(素朴、とび・土木)」「登録海上起重技能者(土木、しゅんせつ)」「登録標識・路面標示基幹技能者(とび・どぼく、塗装)」の4つを除く、29の資格が主任技術者として要件を満たします。この29資格は、それぞれが対象とする業種のうち、土木一式工事を除く専門工事の主任技術者の要件として認定され、残る4資格も規定や運用の見直しによって、要件を満たすことが確認できた時点で主任技術者として認定する方針です。
技能労働者にとって最上位の認定資格とされる登録基幹技能者の2016年3月末での登録状況は、33職種の合計で5万1660人となっています。