建設キャリアアップシステム利用料金値上げか?
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業界から不満続出!建設キャリアアップシステム利用料金値上げか?
国土交通省が6月24日に開いた官民の建設キャリアアップシステム(CCUS)運営協議会・運営委員会で、利用料金の引き上げを提案したことに対し、業界から不満の声が上がっています。
CCUSは建設技能者の処遇改善の“切り札”に位置付けられるだけに、今後の運営に関しては受発注者間の建設的かつ現実的な議論が求められます。
国土交通省の財源対策案
国土交通省は、CCUSを運営する振興基金の財政悪化を主因に利用料金体系の見直しを提示しました。
10月から新しい料金体系に移行したいとしています。
具体的な料金改定は下記通りです。
- 技能者登録料 2500円⇒4000円!
- 事業者登録料 5倍に引き上げ
※例えば資本金2000万円の企業が事業者登録する場合、24000円から120000円に! - 現場利用料 3円⇒6円に
さらに、国土交通省は、利用料の引き上げと共に、不足するシステム開発経費20億円は業界による追加支出を求めています。
費用想定甘く、今年度末には赤字が累積100億円に
2019年度末の累積赤字は56億7千万円、20年度末には100億円に達する見込みです。
2019年度までの利用料金の累積収入が12億6000万円だったのに対し、登録経費は32億6000万円かかっており、収入で運営費を賄えていない状況にあります。
また、システムにも追加開発費用が発生し、合計で20億円が不足している事態となっています。
赤字となった要因を分析すると、次のようなことが判りました。
- 加入促進を重視し、初期設定で料金を抑えすぎたため、加入者が増えるほど赤字が膨らむといった構造的な課題を抱えていること。
- 登録情報の真正性を確保するための厳格な審査実施や申請書類の不備の多さなどから、審査・登録に想定を上回る時間と費用がかかっていること。
業界から不満続出!CCUSの普及のブレーキにとの懸念
CCUSに関しては、さらなるサービス向上や公共工事だけでなく、民間工事での普及を促すような施策を求める声の中には「早期の義務化」を訴える意見が根強い中での今回の提案に、業界から不満の声が上がっています。
業界団体の意見によると、技能者・事業者登録料や現場利用料の引き上げは「加入のブレーキになる」との見方が少なくありません。
「特に技能者の登録料を引き上げるのが難しいのではないか」(団体幹部)との見方や「技能者を抱える事業者の経営を圧迫することになる」(別の団体幹部)と値上げに反対する意見が大半です。
CCUS普及に力を入れる団体の幹部からは「加入者が増えるほど赤字が増加するという料金設定に問題があった」とCCUSの運用計画に疑問を呈し、赤字になった経緯の十分な説明を求めています。
「料金だけ上げてサービスの質が変わらなければ、登録が進むわけがない」(団体事務局)という指摘や、「現時点で登録が進んでいないのは、利用者が十分なメリットを感じられていないからだ」(業界関係者)といった意見もありました。
20億円は業界による追加支出に対して
ある団体の事務局は2回目となる費用拠出に対し「応じるかどうかはこれから検討したい」とコメントしました。
別の団体の幹部は「(拠出は今回までで)3回目はない」とくぎを刺し、「今回もっと利用料を引き上げてでも持続可能なシステムにすべきだ」と話しています。
コストカットやサービス内容を求める提案も
利用料金を引き上げる前に「まずは(現行の運営費用の)コストカット。入口の敷居を低くしないと加入は進まない」「コストカット案が示されないと(引き上げは)到底了承できない」と、コストカットを求める声も上がっています。
また、建退共や社会保険、就業履歴の蓄積だけを望む技能者がいることから「能力評価は別として、審査する項目を絞り、ステップアップしたい人は追加の料金を支払う仕組みにしては」など、サービス内容の見直しによって料金引き上げを抑制する提案もあります。
システム普及の目標などを再設定するとの指摘
システム登録に関する数値目標の見直しや団体別の目標設定といった、登録実態を精査した上でシステム普及の目標などを再設定するとの指摘が挙がっています。
累積赤字に国費対応求める声
「建設業振興基金の執行体制に問題があるのではないか」と国の指導監督責任を問う向きがあり、システム運営に伴う累積赤字を「国費で対応すべきではないか」との声が聞かれました。
今後の動向
「建設キャリアアップシステムは必要不可欠である。後戻りすることはあり得ないわけだから、しっかりと知恵を絞っていかなければならない」と技能者の処遇改善を担う制度インフラとしての定着に向け、受発注者が足並みをそろえることが重要との考えは根強く存在します。
国交省は「(業界団体に)了解をいただけるレベルまで議論する」姿勢を示す一方、システム運営は財政的に深刻な状況にあるため、利用者からの理解を大前提としつつ、早急に方向性を固めたい方針だ。
(参考資料「建通新聞 6月26日」、「日刊工業新聞 6/26」国土交通省ホームページ)