令和2年【建設業法改正】経営業務管理者要件を明示
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経営業務管理者要件を明示
国土交通省は、改正建設業法の施行に向け、同法施行規則の改正案をまとめました。
以下の内容の詳細を定めています。
◆経営業務管理責任者の配置に関する合理化
◆経営事項審査の見直し内容
5月13日~6月12日に、同法施行規則の改正省令案に対するパブリックコメントを募集。
それを考慮し、6月に公布し、10月1日に施行されます。
技術検定に関係する規定のみ2021年4月1日の施行となります。
実際には、まだ具体的な運用が示されていないため不明な点はありますが、次のように言えると思います。
今まで「経営業務管理責任者要件のため許可を取ることができなかった事業者」が許可を受けることが出来るようになる場合があると言えます。
ただし、許可申請手続き上の煩雑さが増す可能性があります。
現在までに示されている改正案をまとめました。
経営業務管理責任者に関する法令の変更点
国土交通省によると、今回の法改正で、『事業者全体として適切な経営管理責任体制を有しているかどうかを判断する』と見直したことを踏まえ、適切と認められる体制を規定したとしています。
つまり、経営者個人としてではなく、『事業者全体』という観点で、経営業務管理責任者要件を見直すということです。
大枠としては次のような内容になります。
経営業務管理責任者の要件は緩和され、その代わりに「補佐」するものの要件が追加されることになりそうです。
緩和される内容としては、次のような内容です。
◆建設業の種類ごとの区分は廃止し、どの種類の経験でも認められる。
◆経営業務が、財務管理、労務管理、業務運営のいずれかでよい
◆ただし、上記の場合は、一定の経験を有する「補佐」が必要
具体的な施行規則の改正案は下記のとおりです。
適切な経営能力を有する者として、下記(イ)または(ロ)のいずれかの体制を有する者であること。
(イ)常勤役員のうち1人が下記(a1)、(a2)または(a3)のいずれかの体制を有する者であること。
(a1)建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(a2)建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にあるものとして5年以上経営業務を管理した経験を有する者
(a3)建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にあるものとして6年以上経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
(ロ)常勤役員等のうち1人が下記の(b1)または(b2)のいずれかに該当するものであって、かつ、当該常勤役員等炉直接補佐するものとして、下記の(c1)、(c2)及び(c3)に該当するものをそれぞれ置くものであること。
(b1)建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験二年以上を含む5年以上の建設業の役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位における経験を有する者
(b2)建設業の財務管理、労務管理又は業務運営のいずれかの業務に関し、建設業の役員等の経験二年以上を含む5年以上の役員等の経験を有する者
(c1)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の財務管理の経験を有する者
(c2)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の労務管理の経験を有する者
(c3)許可申請等を行う建設業者等において5年以上の運営業務の経験を有する者
社会保険の全適用事業所で義務化
現在は、建設業許可申請の際、社会保険(厚生年金・健康保険)の加入は要件にありません。つまり社会保険に未加入の業者でも許可要件をすべて満たしていれば問題なく建設業許可は下ります。
しかし、10月1日以降は、『全適用事業所』は社会保険の加入が義務化され、建設業許可申請の際に必要な条件となります。
◆健康保険、厚生年金保険の適用事業所すべて:厚労省に届け出ていること
◆雇用保険の適用事業すべて:厚労省に届け出ていること
が必要です。
なお、労働者ごとの加入までは要件とされていません。
これを契機に、国土交通省は「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」を改正します。
建設キャリアアップシステムに登録された情報を活用し、効果的に社会保険加入を確認・指導することを原則化します。
社会保険の適応事業所とは
厚生年金保険は、事業所単位で適用されます。
(強制適用事業所)
厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて厚生年金保険の適用事業所となります。
(任意適用事業所)
なお、上記の適用事業所以外の事業所であっても、従業員の半数以上が厚生年金保険の適用事業所となることに同意し、事業主が申請して厚生労働大臣の認可を受けることにより適用事業所となることができます。(出典:日本年金機構ホームページ)
事業承継制度の新設
譲渡や合併、分割の際に必要となる書類が明記されました。
【(事業)譲渡及び譲受け】
- 譲渡及び譲受けに関する契約書の写し
- 譲渡人又は譲受人が法人である場合には、譲渡又は譲受けに関する株主総会議事録等(有限会社では社員総会議事録、持分会社においては、無限責任社員または総社員の同意書等、譲渡もしくは譲受けに関する意思の決定を証する書類)
【合併】
- 合併の方法及び条件が記載された書類
- 合併契約書の写し及び合併比率説明書
- 合併に関する株主総会議事録等(有限会社では社員総会議事録、持分会社においては、無限責任社員または総社員の同意書等、譲渡もしくは譲受けに関する意思の決定を証する書類)
【分割】
- 分割の方法及び条件が記載された書類
- 分割契約書(新設分割の場合にあっては、分割計画書)の写し及び分割比率説明書
- 分割に関する株主総会議事録等(有限会社では社員総会議事録、持分会社においては、無限責任社員または総社員の同意書等、譲渡もしくは譲受けに関する意思の決定を証する書類)
【相続】
- 申請者と被相続人との続柄を証する書類
- 申請者以外に相続人がある場合には、当該建設業を申請者が継続して営むことに対する当該申請者以外の相続人の同意書
- 相続した者が建設業許可業者として適正な者であることを担保する書類等、その他の添付書類、書類の免除や相続後に提出を求める書面の規定については、承継と同様とします。
施工体制台帳に作業員名簿追加/施工体制台帳、帳簿の電子化/電子契約
施工体制台帳に作業員名簿追加
これまで任意だった作業員名簿は、施工体制台帳の書類の一つになります。
特定建設業者に対し作成と現場への備え置きを義務付けることになります。
施工体制台帳に記載を求める事項も追加されました。
・工事従事者の氏名などの基本情報
・社会保険の加入状況
・中小企業退職金共済制度または建設業退職金共済への加入状況
・安全衛生教育の内容
・任意で保有資格 などを記載することになりました。
施工体系図の記載事項には、下請業者の代表者氏名や許可番号などが追加されます。
現場での下請業者の建設業許可証の掲示廃止を受けた措置です。
施工体制台帳、帳簿の電子化
施工体制台帳や帳簿に関しては、添付書類などの電子化を認める規定が設けられました。
電子契約
書面で契約を締結した場合でも、契約書や下請契約書の写しを電子データ化して添付することなどが可能となります。
すべてがノンペーパーで対応できるようになります。
監理技術者講習の有効期間の見直し/経営事項審査に関する見直し/登録経理講習実施機関の創設
監理技術者講習の有効期間の見直し
監理技術者講習の有効期間の見直しも行われました。
現行、有効期間は講習を受けた日から5年間となっています。
これを受講日の翌年の1月1日を起算点として5年間として統一されることになりました。
経営審査事項の見直し
所属する技術者・技能者が継続的に能力向上に取り組んでいる建設企業を評価する項目が新たに設られました。
登録経理講習実施機関の創設
企業会計基準などが頻繁に大きく変更されていることから、講習などを受講して登録を受けている公認会計士、税理士、登録経理試験の合格者の数を評価対象とすると規定されます。
評価基準の変更に伴い、登録経理講習を実施する機関に関する規定も設けられました。
(参考資料「建通新聞 5月14日」)