休廃業・解散での建設市場からの撤退が増加
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債務超過などで破たんする前に、休廃業・解散という形で建設市場から撤退する企業数が増加の一途をたどっています。2018年の倒産件数が過去30年で最小になる一方、倒産統計には表れない「静かな建設市場からの退場」が顕著に増加しています。
また、建設業で休廃業・解散をした企業トップの年齢は、70歳台以上が54%と半数以上を占めるなど、高齢化も進んでいます。
安倍政権は中小企業支援と雇用継続につなげる目的で、事業継承時の金銭負担ゼロを柱にした中小企業向け事業継承税制を昨年から導入しましたが、企業の市場撤退に歯止めはかかっていません。
倒産件数は最小件数にとどまる一方で
建設業で休廃業・解散するケースが、2018年は前年比8.7%増の9084件に上ったことが、東京商工リサーチの「2018年休廃業・解散企業動向調査」で明らかになりました。同社調査による2018年の建設業倒産(法的・私的倒産で負債額1000万円以上)は1431件で平成以降、最小件数にとどまっています。
第2次安倍政権発足後、顕著になった建設業倒産件数の減少傾向に対し、休廃業・解散企業数はこの10年間で7000社から8000社の高水準で推移し、2018年には9000社を突破しました。
その結果、倒産件数に対する休廃業・解散件数の割合もこの10年間で2倍から6倍まで膨れ上がっています。
倒産抑制が顕著になりながら、一方で余力を残して建設市場から撤退するケースが後を絶たないことも明らかになりました。
また、東京商工リサーチの調査によると、休廃業・解散した建設業9084社の従業員数が前年比14.7%増の2万4856人となりました。
行政だけでなく建設産業界が近年重視しているのは企業数の増減ではなく、地域のニーズに応えられるだけの供給力・担い手数ですが、この2万4856人のその後の行き先は不明となっています。
ただ、地方の場合、競争相手同士でも最終的には仕事を共同で行うケースも多く、「廃業した企業の従業員を地域の別企業が雇用する例も多い」ようです。
休廃業・解散は日本経済への影響も
さらに、休廃業・解散企業のトップの年齢は2018年には70歳台が占める割合が初めて40.8%と4割を突破し、80歳台以上を含めると54%と半数以上を占めています。
安倍政権は既に、日本の企業数の9割を占める中小・零細企業で事業継承が進まず、トップの高齢化が進めば、黒字経営でも企業を清算することが雇用や日本経済に悪影響を及ぼすとして、大胆な事業継承税制見直しを含めた中小企業支援策を打ち出しています。
ただ今回の休廃業・解散企業調査だけを見ると、支援策効果はまだまだ浸透しているとは言い難いのが現状です。